【姉妹施設のご案内】貝塚市の登録有形文化財「つなぐ古民家」

登録有形文化財として

寺西家阿倍野長屋は、2003年12月1日に国の登録有形文化財として登録されました。近代長屋として全国で初めて登録された建築であり、その歴史的価値と都市景観への貢献が高く評価されています。

登録有形文化財とは

国の文化財保護制度の一つで、原則として建設後50年以上を経過した建造物から、文化的価値が認められたものが登録されます。指定文化財よりも広い範囲を対象とし、所有者の負担を抑えながら、歴史的建築物の保存と活用を後押しする仕組みです。

指定文化財との違い

指定文化財は、特に重要で希少な文化財を厳選して指定し、保存に関する規制も比較的厳格です。一方、登録有形文化財は、より幅広い建造物を対象とし、所有者の自主性を尊重しながら保全を促す、柔軟な制度として運用されています。

登録の意味

登録有形文化財となることは、その建築が日本の近代化を語る上で重要な遺産であることを国が公式に認めた証です。建物の歴史的価値が社会的に評価され、保存・活用の正当性が確立されるだけでなく、地域に残る暮らしや記憶を次世代へ受け継ぐ拠点としての役割も期待されます。

登録有形文化財に選ばれた理由

寺西家阿倍野長屋が国の登録有形文化財として認定されたのは、建築的・歴史的価値が総合的に高く評価されたためです。以下の5つの要点が特に重要視されました。

01

良好な現存状態

昭和初期に建てられた四軒長屋が、建築当初の形態をよく保ち現存しています。都市部では失われやすい木造長屋建築が良好に残る例として、大きな価値があります。

02

戦前長屋建築の特徴を明確に保持

入母屋造の瓦屋根や、各住戸を床下から天井裏まで隔てる壁構成など、昭和初期の長屋建築の特徴が明瞭に残っています。これらは当時の防火・遮音に対する工夫を示す貴重な資料です。

03

塀式長屋としての構成

寺西家阿倍野長屋は「塀式長屋」に分類され、各戸の前に前庭・塀・門を備える配置となっています。戦前の大阪における「上質な住宅としての長屋」の姿を示す点が評価されました。

04

街区景観への寄与

向かいに建つ寺西家住宅(1926年築)とともに、当時の街区景観を今に伝える重要な存在です。長屋と母屋が対を成す構成は、地域の歴史的環境を読み解く重要な手がかりとなります。

05

保存と活用の先駆的事例

解体の危機にあった建物を保存・再生し、飲食店やギャラリーとして活用してきた取り組みは、長屋建築の活用モデルとして評価されました。文化財としての価値を地域へ開く好例となっています。

受賞歴と社会的評価

寺西家阿倍野長屋の再生と活用は、
建築・都市デザインの分野で高く評価されています。

🏆

大阪市都市景観建築賞

第26回大阪市長賞(愛称:大阪まちなみ賞)を受賞。建物を生かしつつ街との調和を図った点が評価されました。

2006年(平成18年)

🏛️

生きた建築ミュージアム

大阪市「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」に選定。長屋再生のお手本的事例として紹介されています。

大阪セレクション

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国登録有形文化財

2003年12月1日登録。近代長屋として全国で初めて登録有形文化財となり、文化財活用のモデルケースとなりました。

第27-0331号

主要掲載論文・寄稿

特集:既成市街地のまちなみ
「まちなみと登録文化財 ― 昭和初期の長屋」

著者:寺西 興一 / 掲載誌:『家とまちなみ』第65号(2012年)

阪南土地区画整理(昭和初期)による「整然とした長屋のまちなみ」の形成から、戦後の変容、そして登録有形文化財として保存再生に至るまでの経緯を詳述した記録です。単なる建物の保存に留まらず、まちなみ景観への寄与について論じています。

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その他の専門書・データベース掲載

DATABASE / CASE STUDY
都市の鍼治療データベース(Urban Acupuncture)

世界中の小規模な都市再生事例を集めたデータベースにおいて、町家(母屋)と長屋がセットで保全された、地域活性化の重要事例として詳細に紹介されています。

▶ 掲載ページを見る
REFERENCE BOOK
まちづくり100年の記録「大阪市の区画整理」

大阪市建設局発行の記録誌等において、阪南土地区画整理事業(大正12年〜昭和6年)の成果を示す歴史的な街区構成の文脈で、当エリアのまちなみが参照されています。

▶ 関連ページ(大阪市)
ACADEMIC & PUBLIC
全国的な講演・活動

「大阪府登録文化財所有者の会」事務局長として、また全国の文化財保存活用団体において、長屋を核とした地域コミュニティ再生のモデルとして多数の講演を行っています。

▶ 大阪府登録文化財所有者の会
MEDIA
大阪観光公式サイト「OSAKA-INFO」

大阪の歴史・文化を紹介する主要観光ガイドにおいて、昭和レトロな雰囲気を残す「昭和町」エリアの象徴的なスポットとして掲載されています。

▶ 掲載ページを見る

近代長屋として全国初

寺西家阿倍野長屋が持つ歴史的意義と、その登録が日本の文化財保護に与えた影響

全国初の登録

近代長屋として全国で初めて登録有形文化財に選ばれたことは、日本の建築遺産保護史において重要なマイルストーンです。これまで注目されてこなかった「庶民の住まい」が、文化財として認識される転機となりました。

大阪の近代化を記録

昭和初期の大阪は、急速な都市化と近代化が進んだ時代です。寺西家阿倍野長屋は、その時代の都市住宅のあり方、防災思想、生活文化を物理的に記録する貴重な遺産です。

文化財活用の先駆け

解体寸前から保存・再生へ転じた決断は、文化財を「保護対象」から「地域資源として活用する」という新しい視点を示しました。飲食店やギャラリーとしての活用は、全国の文化財活用の参考モデルになっています。

昭和町のアイデンティティ

寺西家阿倍野長屋は、昭和町の歴史的アイデンティティの象徴です。地域の人々にとって、また全国から訪れる人々にとって、この建物は「昭和の暮らし」と「地域の記憶」を物語る重要な存在です。

文化財保護の新しい可能性

寺西家阿倍野長屋の事例は、「建物を守ることは、人をつなぐこと」という重要な気づきをもたらしました。文化財保護が単なる保存ではなく、地域の人々が関わり、訪問者が学び、新しい価値が生まれる場所として機能することの大切さを示しています。この視点は、今後の日本の文化財活用において、ますます重要になっていくでしょう。